作品は、都会の片隅で生きる‘虚入（うつろい）’のギャルをテーマにした写真集です。

「ギャル」というと華やかさや派手さをイメージする方が多いかもしれませんが、ここに登場する彼女は、ただ外見が派手なだけの存在ではありません。
日々の生活の中で少しずつ積み重なっていく孤独や、誰にも見せない素の表情を抱えながらも、自分らしく立ち続けようとする強さを秘めています。

写真集の中では、彼女の大胆で自由奔放な一面と、ふとした瞬間に垣間見える弱さや繊細さが交錯します。
夜の街に溶け込む姿や、日常の中でふと見せる素朴なまなざし、そして誰かと向き合うときに表れる心の温度。
そうした表現が、一つひとつのカットに込められています。

タイトルにある‘虚入’という言葉は、彼女の心の内側にある空白や、不安定さを象徴するものです。
しかし、それは決して暗さや後ろ向きなものだけではなく、見る人の心に「人は誰しも抱える空虚さの中に美しさがある」という気づきを与えてくれます。
表面的なきらびやかさに隠された奥行きが、この作品の最大の魅力です。

本作は、単なる人物写真集ではなく、ひとりの女性の‘現在’を切り取ったドキュメンタリー的な作品でもあります。
ページをめくるごとに、彼女の笑顔や視線、仕草から、人生の断片や感情の揺らぎが立ち上がり、観る者に語りかけてきます。
そのため、単に被写体を眺めるだけではなく、自分自身の経験や感情と重ね合わせて読み取る楽しみが生まれます。

ギャルという存在が持つ「強さ」と「儚さ」。
その二つが交錯することで、作品全体に独特の余韻が広がります。
彼女の鮮やかな髪色やファッションは視覚的な刺激を与えながらも、そこに込められた‘生き方の選択’が感じ取れるでしょう。

さまざまなシチュエーションや角度から彼女を描き出した構成は、飽きることなく最後まで楽しむことができます。
華やかさと素朴さが同居するコントラストは、読む人の感覚に強い印象を残すはずです。

この写真集は、一人の女性の生き様を丁寧に切り取り、見る者に「人を知ること」「人と向き合うこと」の意味を静かに問いかけます。
表層的な美しさを超えて、深く共感できる作品に仕上がっています。