首塚
森裕士は46歳。
7年前に大手新聞社を退社し、フリーの記者になった。
新聞社時代の先輩で、議員秘書になった横里龍一が政治家の不正を秘匿し、自殺した事件の真相を追っている。
大手町にある平将門の首塚で、京都からやってきた彼の妻・横里響子と会うことに。
彼女は40歳で、結婚する前は祇園のクラブでホステスをしていたらしい。
花の刺繍が施された青いワンピースの上にカーディガンをひっかけ、日傘をさしている。
肩の上に揃えた髪の毛はまっすぐで、年齢よりも少し若く見えた。
化粧が薄く、切れ長の目と小さな唇で地味な顔立ちなのに拍子抜けした。
先輩の死について詳しく聞こうと、2人で酒を飲んだが、彼女はアルコールに強いようだ。
それでも話す言葉が柔らかい京都弁に変わる。「親密な人にしか、京都の女は本音は話せへんねん」と潤んだ瞳で見つめられた裕士は……。
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